2012/11/29本会議(議案上程、委員会付託)および、12/3本会議(一般質問第一日目) 傍聴記

松江5丁目在住の江戸川区民・松江ゴローです。

 

江戸川区議会の第4回定例会が1129日(木)から始まり、123日(月)、4日(火)に本会議(一般質問)が行われました。私は今回、3日から続けて3日間傍聴に通いましたが、まず本会議1日目の模様からレポートします。

「施策見直し」を伝える12月10日付「広報えどがわ」。多田区長の招集挨拶が一面に。
「施策見直し」を伝える12月10日付「広報えどがわ」。多田区長の招集挨拶が一面に。

江戸川区はお金がない? 


1129日に行われた、多田正見区長の招集挨拶でも強調されていましたが、江戸川区は今、かなりの財政難のようです。

 

歳入の3分の1を占める財政調整交付金は、今年度見込みが775億円で、ピーク時(平成19年)の936億円から160億円の減収。対する歳出面は、制度開始当時106億円だった介護保険事業の額が今年度325億円になり、大幅な支出増である、と説明されています。

 

そこで区長は来年度から、216項目32億円におよぶ施策の見直し、つまり予算の削減をすると決定しました(編集者注:来年度の予算は平成25年2月の第一回定例会の審議を経て、最終決定します)。カットされる予算の多くは福祉・教育に関するもので、区民から見れば、そのぶん行政から受ける恩恵が少なくなります。この日一般質問に立った各会派の委員たちからは、区長の決定に理解を示し、エールを送る議員が少なからずいた一方、「財政難にあっても必要なサービスはなくすべきではない」との意見も出されました。

 

田中淳子議員(江戸川区議会公明党)

「個性的な福祉政策の堅持は必要。看板政策を外してはいけないのでは?」

 

区長「看板政策を続ければウケはいいだろうが、あくまで健全財政あってのこと。

サービスを維持しにくい財政状況になれば致し方ない」

 

桝秀行議員(みんなの党・ひとりの会)

「行政サービスをカットする一方で納税率が同じでは、区民からすれば実質的な負担増でしかない。区長は「歳入」と「歳出」の不均衡についての話だけをしていたが、財政を成すものとしてはこの2つ以外にも「資産」がある。区では資産の正確な把握はできているのか?施策見直しの前にまず区の資産を時価評価額で正確に把握し、売却できる資産があるなら売却を進めるべきだ」

 

区長「資産活用が曖昧なのはおっしゃるとおり。ただ区が所有している資産は直接区民へのサービスを行なっている行政財産がほとんど。普通財産は少なく、あっても行政と同様のサービスをしている団体などに貸し付けている。ほとんどのものは売ることができず、売ればサービスの打ち切りになる」。

 

「遊休資産はない」とする区長の答弁。ただこれは、消費税増税を推進する財務省職員が超豪華な公務員宿舎に住んでいた……ではありませんが、行政側にとっての決まり文句でもあります。また今回の区長発言だけでは、どこからどこまでが区長の言うところの「行政財産」なのか、また「貸している普通財産」が、どのような団体にどのような形で貸し出されているのか、よくわかりません。今回質問した桝秀行議員でも他の議員でもいいので、こうした実態をぜひ詳らかにしてほしい、と区民としては望みます。

 

給食費補助も打ち切りに

 

ところで、田中淳子議員が「看板政策を続けるべき」と要望していましたが、これは中里喜一前区長時代の1974年に始まった、学校給食の給食費一部(3分の1)負担のことも指していると思われます。これは東京23区でも江戸川区だけがやっている事業で、子どものいない私ですら他区に住んでいる頃から知っていたくらいなので、まさに江戸川区にとっての看板だったのでしょう。「子育てをしやすい区」という江戸川区のパブリックイメージを形作る原動力のひとつだっただろうとも思いますが、区長はそれも来年度からやめると表明しています。日本共産党江戸川区議員団の瀬端勇議員からは、「中里前区長時代に、『日本一の学校給食を作ろう』と思い続けてきた、その誇りはないのか?」との厳しい意見が出ました。

 

それに対する区長の反論は、「今まで貰えていたサービスを貰えなくなれば不満でしょうが、(給食費の補助は)元々江戸川区だけがやってきたことであって、それを他の22区並にします、というだけのこと。別に他と比べてみじめになるわけじゃないでしょ?」というものでした。

 

さらに糾弾にいささかカチンと来ていたのか、「この理屈が分からない瀬端議員の頭の中身が、私には理解できませんね」とも言っていました(さすがに本人も言い過ぎたと思ったのか、翌日の一般質問が始まる前に訂正・陳謝していましたが)。

 

たしかに22区とおなじになるだけ、と言う方はできるかもしれませんが、給食費の補助打ち切りによって、「子育て世帯に手厚い区」というこれまでの区のイメージが少なからず薄まるのは避けられません。さらに言えば、江戸川区は去年の原発事故以来、「東京におけるホットスポット」というネガティブなイメージがまとわりついてしまっています。それに加えてこれまでの強みまで手放してしまうのであれば、他区住民に「江戸川区に引っ越したい」と思わせることはおろか、今いる住民に「このまま留まりたい」と思わせることも、今までより難しくなっていく気がします。

 

歳入が減っているから歳出をカットする。―――行政マンとしては最初に考えたくなる図式でしょう。しかし区税の主な担い手である現役世代人口が減ってしまえば、さらなる税収減という事態だって考えられます。区長にそうした長期的な視点はあるのでしょうか?これからの江戸川区がどうなるのか、色々と不安を覚えた一般質問初日でした。